アメリカ映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)~ その時代と登場人物の背景を考える
[N・Sさんwrote:]
「サウンドオブミュージック」全部見ました。
さすが賞を幾つも取った映画ですね、
家族とは何なのかを問ているようです。
N・Sさん...
名作映画というモノがどういうものなのか、
なんとなく分かってきましたか?
名作映画というのは、多くの人が
”これは内容のある質の高い映画だから、
後世に残していかないといけない”
と認めた(決めた)作品なのです。
映画『サウンド・オブ・ミュージック』は、
ただ家族愛のことだけを描いた作品
というわけではないです。
その背景となる時代も描かれております。
ナショナリズムやファシズムのことも、
騎士道の精神(忠義)のことも、
そして宗教(キリスト教)とは何か、
ということまで描かれております。
奥が非常に深いです。
こういう名作映画がこれまでの人類史上で
百本ほどあるんですよ。
それらをまず優先的に観ていくべきでしょう。
こういう映画は、学校の授業の一環として
子供たちに観させるべきではないかな。
以下、映画『サウンド・オブ・ミュージック』
の事後鑑賞をしておきましょう。
名作映画を観終わったあとには、
ただ「面白かった」とか「ツマラナかった」
とかの感情を抱くだけでは足りず、
その映画内容を自分なりに消化する作業が
重要になってきます。
◎ 騎士道の精神
あのお父さん(貴族)は、どうして
祖国オーストリアを去る決断をしたのか、
わかりますか?
あの貴族としての地位・財産や生活は、
かつてのオーストリア国王から彼の先祖に
与えられたものなのです。
彼自身、先の第一次世界大戦で潜水艦艦長として
大きな戦績をあげ、騎士の称号を与えられた英雄です。
騎士は、馬に乗った武士という意味ではないです(笑)w。
忠義心に厚い貴族なのに武術にも優れている人
という意味であり、
ただ剣術が優れている武人という意味ではないです。
オーストリア人もアーリア系民族であり、
アーリア系民族としてドイツ人と同じ国になるのが
良いと考える人たちが多数派だった中、
彼のようにオーストリアという王国の誇りを保ちたい
と考える人もいたのです。
ナチス・ドイツのヒトラー総統は、
同じオーストリア生まれなのですが、
まともな教育を受けておらず、
塗装工や絵描きをやっていたんです。
そんな奴に騎士である私が従えるか
という気持ちが強かったでしょう。
オーストリアの英雄である彼が
もしナチス・ドイツに協力すると、
オーストリア国民に与える影響が大きいです。
だからこそナチス・ドイツ側としては、
ぜひとも彼をナチス・ドイツ側の将校として
起用したかったのですが、騎士である彼は、
かつての国王への忠義のため、
あえて亡命の道を選んだのです。
◎ オーストリアの一般庶民
彼の娘と恋仲にあったはずのあの郵便配達人
の若者は、ナチス・ドイツのゲシュタポの一員
となりました。
郵便配達人は、個人情報を扱っていますから、
ナチス・ドイツ側としては、ぜひとも
欲しい人材なんですねぇ。
彼に将来の高い地位(給与)を約束して
ゲシュタポ(ナチスの公務員)になるように
勧めたのでしょう。
最後の最後で彼は、ゲシュタポの一員としての
行動をとりました。
つまり、あの美人の娘よりも、
ナチス・ドイツ下での自分の地位を
選んだわけですねぇ。
かつては貴族階級の娘と一緒になって逆棚ぼたで
裕福な生活をしようと考えていたのでしょう。
しかしながら、
亡命しようと試みるような貴族は処刑され、
家財は没収されるでしょうから、
堅実な下級公務員の道を選んだほうが得策だ
と考えたのでしょう。
あの若者はオーストリアの庶民を代表する人物
として、映画の中に登場しているのです。
貧乏なオーストリアの一般庶民にとっては、
ナチス・ドイツに従ったほうが得だ
と考えられたのでしょう。
国民の大部分を占める庶民階級としては、
学校もまともに出ていない自分たちと同じ庶民
=ヒトラーが治める民主主義国家のほうに
魅力を感じたというわけです。
◎ カトリック教会
教会(修道院)の立場は、どんな感じだったか?
あのシスターたちは、どうして助けてくれたのでしょう?
”人助けがキリスト教の精神だからだ”
と思いますか(笑)?
あの修道院は、カトリック教会の管轄です。
着ているシスター服でわかりますし、
教会全体の雰囲気でわかります。
そもそもプロテスタント系教会には
あんな服装をしたシスターはいないんです。
神父さんやシスターの結婚を禁止する教義を
もっているのは、カトリックです。
カトリック教会は、国王や貴族の庇護
=多額の寄付金で運営されておりました。
だから大衆民主主義を前提とする独裁国家ナチス
よりも、従前の王国体制のほうに
親和的だったのです。
N・Sさんもルター・カルバンによる宗教改革
のことは知っているはずですが、
ドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国の
多くの地ではカトリックよりも
プロテスタント系教会のほうが
庶民には普及しておりました。
庶民階級は、プロテスタント系教会に通い、
そしてナチス・ドイツに協力したのです。
同じキリスト教といっても、
カトリックとプロテスタントとでは、
ナチス・ドイツとの対応に関しては、
見解が異なったのですよ。
未調査事項(推測)ですが・・・、
あのお父さん(貴族)が保有していた家財や農園
などの権利等一切は、執事の雇用関係も含めて、
あの修道院に寄贈されたと思います。
だから助けてくれたんですねぇ(笑)w。
◎ オーストリアの貴族階級
あの男爵夫人は、どうして去って行ったのでしょう?
マリアとの恋愛合戦に敗れて潔く去って行った(笑)?
あの男爵夫人は、
当時のオーストリアの貴族階級を代表する人物
として登場しているのです。
豊かな財産を維持して現状生活を継続するためには、
かつての国王への忠義よりも、ナチスを受容れて、
無難に中立的に静かに生きていくしかなかったのです。
ナチス・ドイツに反抗的な男と一緒になると
危険だったのです。
◎ 商人(経済界)
音楽祭(歌唱祭)の公演実施を仕切っている友人は、
商人(経済界)の代表として登場しています。
経済界としては、利益を得るために、
新しい大きな取引先であるナチス・ドイツに
迎合する道を選んだのです。
どうですか?奥が深いでしょ?
その時代と登場人物の背景を考えるようにすると、
映画内容をよく理解できるはずです。
名作映画では無駄な登場人物は出てこないのです。