アメリカ映画『哀愁』Waterloo Bridge(1940年)~ ビリケン人形の意味 : ジャポニスム

 N・Sさん...


私がいま観ている映画は『哀愁』(1940年)です。

原題は『Waterloo Bridge』です。

邦題と原題が全然違っております。

Waterloo Bridgeはイギリスにある橋の名前です。

その場所で哀愁を感じる出来事があった、

ということです・・・。


イギリス映画ではなく、アメリカ映画です。

第二次世界大戦中のはずなのに、アメリカでは

こんな名作映画を作れるとは、すごいです。

余裕があったんですねぇ~w。


◎ あらすじと時代背景


英独開戦の日=1939年9月3日、

戦地へ赴く主人公(イギリス軍将校)が

ウォータールーという橋に立ち寄り、

20年以上前(第一次世界大戦中)の

空襲の夜に出会った昔の彼女のことを思い出す

という内容です。

哀しいけれども愛(いと)おしい思い出なのです。


詳細な「あらすじ」がWiki

書かれておりますので、そちらを見てください。


◎ ビリケン人形の意味 : ジャポニスム


この映画の中では、日本と関係のある小道具が

使われております。ビリケン人形です。


ビリケン人形は、アメリカの美術教師・

イラストレーターのフローレンス・プレッツ

(Florence Pretz)が1907年頃に夢の中で

見た神様をデザイン化したものらしいです。

フローレンス・プレッツは、かなりの日本通で

子供の頃より日本の事物についてスケッチして

いたそうです。

プレッツには「ジャポニスム」(日本趣味)

の傾向が濃厚に見られると分析されております。


ビリケン人形の顔立ちはモンゴロイド系ですね。

日本人にも似ている人が沢山いるかも(笑)。

大正期の第18代内閣総理大臣の寺内正毅の

顔立ちとそっくりです。


そのビリケンが、1909年(明治42年)頃に

日本に伝わり、1911年(明治44年)には、大阪の

繊維会社・神田屋田村商店(現:田村駒株式会社)

が商標登録を行い、現在では大阪の通天閣5階で

商売の神様として鎮座しているんです。


不思議だなぁ~と思うのは・・・、

この映画の主人公やヒロイン女性が、

ビリケン人形を”お守り”として考えている点です。

偶像崇拝を禁止するキリスト教の国において、

ビリケン人形といういかにも東洋的なお守りを

持ち歩くという発想が不思議です。

一方の日本のビリケンさんは、戦時中には

敵性文化であるとされ、排斥されておりました。


ビリケン人形という小道具を用いたのには

理由があると思うんです。これは、

「汝の敵を愛せよ」という『新約聖書』

(『マタイによる福音書』第5章43節から48節)

の影響じゃないかな?


◎ マグダラのマリア


ヒロイン女性は彼氏の法的な妻になる前に、

彼氏が突然戦地へ赴任してしまいました。

そして失業してしまいました。

お金に困っていたし、

彼氏が戦死したという新聞報道を見て落胆し、

娼婦に身を落としてしまいます。


しかし、彼氏は無事に戻ってきたんです。

ウォータールーで再会するんです。

ビックリしたでしょうね・・・。


ヒロイン女性は罪の意識を感じてしまいます。

彼氏のお母さんには、

自分が娼婦をしていたことを告白するんです。

お母さんは、許してくれたんです。


思うに、この点にも『新約聖書』の影響を

感じます。

ヒロイン女性のモデルは、マグダラのマリア

じゃないかな?

マグダラのマリアは元娼婦だったのですが、

イエスの内縁の妻になった

と多くの人が解釈しています。

そして彼氏のお母さんのほうのモデルは、

イエスを生んだ聖母マリアです。


つまりこの映画は、キリスト教の影響を

多大に受けて作られていると思います。


◎ 蛍の光


この映画の中で使われている曲は、

N・Sさんも知っている「蛍の光」です。

「蛍の光」は、もともと日本の曲ではなく、

イギリスの民謡でして、明治期に唱歌として

文部省が日本へ曲を輸入したものなのです。


◎ 日本映画『君の名は』(1953年)


戦後8年経った昭和28年、日本では、

この映画『哀愁』のパクリ映画を作りました。

それが『君の名は』という映画です。

イギリスのWaterloo Bridgeの場所設定を、

東京銀座の数寄屋橋におきかえて作りました。

当時の日本で大ヒットしました。

NHKのど自慢の番組などでもよく歌われました。

だから、N・Sさんも、「君の名は」という曲を

聞いたことがあるでしょ?





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