韓国映画『黄山ヶ原』황산벌(2003年)~ コシギ(거시기)と「エンヤコーラ」

 韓国映画『黄山ヶ原』(2003年)を観ました。

三国時代末期を扱った歴史映画ですが、

コメディ映画の要素も兼ね備えており、

なかなか面白いです。


西暦660年、百済軍と新羅軍とが

黄山伐(황산벌)で決戦したのです。

百済軍5千を率いる将軍は階伯(ケベク)であり、

新羅軍5万を率いる将軍は金庾信(キム・ユシン)

でした。


◎ 階伯(ケベク)による妻子殺し


階伯(ケベク)が”後顧の憂いを断つ”ために

自分の妻子を殺して出陣した話は、有名ですね。

その話は、日本にも伝わり、

武家の男子が決死の覚悟で出陣する折には、

武家の女(母や妻)が自ら命を絶つのが美徳

とされました。

そういう話は日本の時代劇によく登場します。

戊辰戦争(会津戦争)のときの西郷家の女たちの

集団自害もこの階伯(ケベク)が作った

武士道の精神の影響と思われます。


この映画『黄山ヶ原』の中では

階伯(ケベク)の妻がすんなりと

自害してくれずに子供たちを守ろうと抵抗し、

階伯(ケベク)によって無理やり殺害された

という設定になっております。

その設定のほうが自然だと考えられ、

それが史実だったのではないかな?


◎コシギ(거시기)


この映画『黄山ヶ原』は、

韓国語音声(日本語字幕)で観るべきです。

百済言葉と新羅言葉とが使われており、

興味深いです。

新羅言葉は、いまの釜山の方言に近い

と思います。あえて日本に当てはめると、

東北弁のようなイントネーションです。


他方、この映画の中の百済言葉としては、

コシギ(거시기)という単語が

頻繁に使われております。

このコシギ(거시기)というのは、

「あれ」や「あそこ」と訳されるのが普通であり、

映画の日本語字幕ではさらに異訳されております。

が、このコシギ(거시기)という単語部分は、

「ナニ」と訳したほうが良いと思います。


日本の江戸っ子が

「ナニがナニしてネ・・・」

と話しているのを聞いたことがありませんか?

時代劇とか落語とかのお笑いシーンです。

その「ナニ」という意味不明なボカシ部分が

コシギ(거시기)に相当すると思います。

口にするのも躊躇されるようなとき、

「ナニ」という具合に胡麻化すわけです。

それと同じだと思います。


韓国ドラマ『緑豆の花』(2019年)においても、

主人公の男が「コシギ(거시기)」

と呼ばれておりました。

「あいつ」というような意味合いですが、

「あいつ」だと完璧に見下してしまうことになり

問題が発生するので、「コシギ」と呼ぶのです。


◎ エンヤコーラ


今回の映画『黄山ヶ原』の中で、

百済の兵士たちが「エンヤコーラ」と

歌っています。

この「エンヤコーラ」は、日本においても

使われている意味不明単語ですが、大陸から

朝鮮半島経由で日本へ伝わったものと思われます。


わりと多くの日本人の遺伝子にユダヤ人のDNAが

流れているというデータがあるのですが、

それと関係していると思うのです。

紀元前586年にユダ王国が滅亡したのですが、

ユダヤ人たちが数世紀数世代をかけて

大陸を横断して、朝鮮半島経由で

日本へ移り住んできたと考えられます。

ユダヤ人が使っていたヘブライ語が

そうやって朝鮮半島や日本へ伝来したのだろう

と推測しております。


ヘブライ語の「אני (ani / アニ:私)」と

「יה (yah / ヤ:神)」が合わさり、

「アニヤ」が訛って「エンヤ」になった。

エンヤは「私の神」という意味です。

そして、「コーラ」は「全能の神」

という意味合いでしょう。したがって、

エンヤコーラは「おお神よ、全能の神よ」

という意味合いの掛け声だと思います。


◎花郎(ファラン)の顔化粧


新羅の時代に、花郎(화랑)と呼ばれる

青年将校候補生たちがいたことは、

その時代を扱った多くのドラマによって

日本でもよく知られております。

花郎(화랑)をドラマで演じているのは、

もちろん美男優ばかりなのですが、

目立つような化粧はしておりません。

化粧によって個性が失われてしまうからです。

しかし、今回の映画『黄山ヶ原』の中では、

花郎(ファラン)たちの顔化粧が目立ちます。

日本の江戸時代の歌舞伎俳優のような顔化粧です。

デーモン小暮のような化粧です。

そして、それが史実に合致しているようです。


花郎は貴族階級所属の子弟を国が集めて

運営していた学問所で集団生活していました。

そういう学問所としては、日本では

平安時代に始まった足利学校や

江戸時代の藩校、そして

明治期の学習院が相当するかな?


今回の映画『黄山ヶ原』の中では、

新羅軍将軍である金庾信(キム・ユシン)が、

花郎たちを一騎ずつ敵陣へ突入させ、

百済軍兵士の矢や投槍によって

死ぬように仕向けております。

それによって新羅軍兵士の士気を鼓舞し、

勝利へと導いたとされております。

だいたいにおいて史実に合致しております。


これは、かつての太平洋戦争末期の

日本の神風特攻隊の精神に似ていますね。

「死ぬことで英雄になれ」という発想です。

金庾信(キム・ユシン)は、

日本の神風特攻隊の生みの親とも言えます。



 歴史ドラマ・映画研究 観賞備忘録 index