韓国ドラマ『屋根部屋のプリンス』(2012年)~遠くからでも美しく近づいても美しいのが本物

 韓国ドラマ『屋根部屋のプリンス』は、

朝鮮時代の王世子(王位承継者)が

現代にタイムスリップしてくるという話で、

フィクションなのですが・・・、

すっごく面白かったし、

それに歴史解釈の通説に対する反骨精神を

感じました。


このドラマ『屋根部屋のプリンス』の中で、

素晴らしい台詞を見つけました。

「遠くからでも美しく近づいても美しいのが本物」

という言葉です。

備忘録に記しておくべきでしょう。


◎ 屋根部屋(옥탑)とは?


日本邦題(タイトル)に入っている文字の

「屋根部屋」っていうのは、

日本の多くの人が想像するもの=「屋根裏部屋」

とは異なります。

ドラマ原題では「옥탑방」(オㇰタッパン)

という単語が使われており

これはマンションの屋上に作った

簡易プレハブ住宅のようなものです。

「옥탑」(オㇰタㇷ゚)は屋上を意味します。

日本では、そういった簡易住宅は

たぶん法律違反になり、滅多には作れないはず。

が、現代を扱った韓国ドラマでは

頻繁に登場する建物(部屋)です。

学生や貧乏な人が住む所というイメージです。


なお、日本人が想像する「屋根裏部屋」のことは

다락방(タラッパン)と言います。

다락(タラㇰ)は「屋根」という意味の単語であり、

방(パン)は「部屋」なので、

다락방は「屋根部屋」と訳すべきですが、

屋根の内側にある「屋根裏部屋」のことです。

屋根の傾斜の内側部分なので、

天井が斜めになっており、その隙間空間に

ベットや収納コーナーが作られるはず。


◎ プリンスと王子と王世子


日本邦題に入っている「プリンス」

という単語については、

原題のほうでは「왕세자」(ワンセジャ)

が使われております。これを漢字に変換すると、

「王世子」です。王位継承権のある王子

つまり日本の皇太子に相当します。

王位継承権のない王子のことは、

ただの「王子」=「왕자」(ワンジャ)と呼びます。


このように、タイトルを見るだけでも、

勉強になりますねぇ(笑)?

そして、タイトルを見ただけで、

ストーリー内容がある程度想像できるのです。

つまり・・・今回の『屋根部屋のプリンス』

では、王位継承権のある王子が、現代に

タイムスリップしてきて、

屋上部屋に住む貧乏女子と出会って、

ラブラブになるというような話ですね・・・。


タイムスリップを扱うドラマって・・・、

時代錯誤やタイムギャップを利用しており

滑稽で面白いのですが、駄作のことが多いです。

歴史に興味のない視聴者を取り込んで

視聴率を上げようという企画なのですが、

史実をゆがめることになり、

全くのフィクション(作り話)になります。

歴史に興味のある人のほうが敬遠してしまうw。


◎ 豪華キャスト


ドラマ『屋根部屋のプリンス』のキャストは、

すごいですよ。

主演男優は東方神起の元メンバーだし、

ヒロイン役は『チャングムの誓い』で

チャングムの同僚医女(シンビ)を演じた

女優さんです。『イ・サン』でも

ヒロイン役をやっておりました。

そのほか、時代劇ドラマの名優たちが、

脇を固めております。


◎ 歴史解釈の多様性


このドラマの中に登場する王世子は、

『トンイ』の中に出てきたトンイのライバルである

チャン・オクチョンという王妃の息子です。

チャン・オクチョンは悪い事を沢山やったので、

廃位させられ服毒死させられたのですが、

息子の王世子は後に王様になりました。

しかし病弱だったために死んでしまい、

トンイの息子クムが王様(英祖)になった

という結末でした。覚えていますか?

『トンイ』では数秒間しか扱われていないことが、

このドラマ『屋根部屋のプリンス』では

20話(20時間以上)になって

触れられております。


ドラマ『トンイ』に描かれていることが

歴史解釈の通説だと言えるのですが、

それには疑問が持たれているんですよ。

トンイは博識聡明な女性ではなかったはず。

だって、教育を受ける機会が全くなかったからです。

たぶん漢字だけでなくハングル文字も書けない。

本なんて読めなかったはず。

おそらく美人だったのでしょう。だから

王様の目にとまった。

が、嫉妬深い陰湿な女だったのでは?

策略を練って、イニョン王妃や

チャン・オクチョンを陥れたのでは?

イニョン王妃が病死したのは、

トンイが毒を盛ったからなのでは?

自分の息子クムを王位に就かせるために、

クムの義兄にあたる王(チャンオクチョンの息子)

に毒を盛って殺したのでは?


一つの時代を扱ったドラマを複数見れば、

いろ~んな歴史解釈があり得るということが

判明して、トンイの実像に近づけるはずです。

本当のトンイは違っていたのでは・・・?

そのように疑問を持つことが重要だと思います。


◎ 遠くからでも美しく近づいても美しいのが本物


ドラマ『屋根部屋のプリンス』第10話の6分頃に、

次のようなセリフがありました。

真理を追求する言葉なので、ハッと驚きました。


ソウルタワーから夜景を見ながら話すシーン

セナ: 「あの光の中で暮らしている人もいます。

遠くの光は幸せそうに見える。でも近くで覗き込むと

ケンカしている人もいるし、寂しそうな人もいる。」

王世子:「”遠くの光は幸せそうに見える”か・・・。」

セナ:「きっと、夜空の星も同じでしょ?」

王世子:「セナさんは?セナさんはどっちなのですか?

遠くから見たほうが美しいのですか?

近くから見たほうが美しいのですか?」

セナ:「どうかしら、自分自身のことは見えないので・・・。

風景を眺めるとき、遠くからと近くからと

どちらが好き?」

王世子:「そこに自分が居たいと思う風景こそが本物です。

だから、遠くからでも美しく、近づいても美しいのが

本物なのです。人でも同じ。」


こういう真理に迫る言葉を書けるシナリオ作家って、

日本には滅多にはいないですよねぇ?

哲学をよく勉強している人だと思います。

ハッと驚いてしまいましたよ。だから、

私は韓国ドラマにハマっているんだと思います。



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