韓国映画『尚衣院 -サンイウォン-』(2014年)~衣装は権力だ!
『尚衣院 -サンイウォン-』(2014年)は、
朝鮮時代の文化や風俗というものをよく理解する上で
手助けとなる作品・歴史資料だと思います。
尚衣院は、李氏朝鮮における王室の衣服を制作したり、
王室の宝飾品などを管理していた部署です。
ハングル文字では、상의원と書きます。
これを正確に発音すると・・・、
sanwiwon サンウィウォンとなります。
◎『尚衣院 -サンイウォン-』の時代背景設定
多くの人に、映画『尚衣院 -サンイウォン-』
を観てみることを是非おススメいたしますが、
少しだけ解説しておいたほうが理解しやすいでしょう。
韓国ドラマによく出演している名優たちが
たくさん出演している映画なのですが、
なにせ解説が見当たりません。
時代設定は特定されていませんが、
おそらく1700代前半だと思われます。
どうしてわかるかと言うと、
清(中国)の使臣が登場しているからです。
朝鮮が清国の属国になったのは1637年頃です。
王様の名前が特定されていないのですが、
おそらく第21代王の英祖(1694年 - 1776年)です。
セリフの中に
①王様が使用人(賤民)の子だという箇所があり、
②先王であった兄の死去によって王になった
とされているのですが、
そういう王様は、英祖以外に考えられません。
この映画を観た韓国人たちの多くも、
あの王様は英祖に違いないと思っているはずです。
英祖っていうのは、歴史ドラマによく登場する王様で、
韓国人がよく知っている王様なのです。
トンイの息子クムと言えばわかりますか(笑)?
◎ 感動的なクライマックスシーン
『尚衣院 -サンイウォン-』の1時間30分前後のシーンは、
観ておく価値がありますよ。
私は、何度も繰り返し繰り返し再生して観ました。
美しい映像に感動します。
何回観ても感動を覚えます。
王様や臣下たちに無視されてきた王妃が、
キラキラ輝くような白い衣装を身にまとい
一人ゆっくりと歩いていくと、
周りの重臣たちが皆ひれ伏してしまうw。
偉そうにしている清国の使臣も、
思わず立ち上がって敬意を表し頭を下げてしまう。
つまり清国が、王と王妃を承認したということでしょう。
結局、浅はかな人間っていうのは、
外見を見てその外見だけに圧倒されて
ひれ伏してしまうものなのでしょう。
衣装は権力だ!
◎ 月とウサギの文化圏
この映画を観ていてハッと気が付いた点があります。
月にウサギがいるのです(笑)。日本と同じですよ。
韓国人も日本人同様、月を見るとウサギが見えるのです。
西洋人が、月の黒いシミを蝙蝠(こうもり)だと感じるのと
全く違う感性です。
映画のバットマンは、あの月の黒いシミと関係があります。
月を見てウサギがいると感じるのは、
どの民族かを調べれば、昔の人間の動きが分かります。
中国、インド、ミャンマー、タイ、韓国、日本、
アメリカンインディアンたちなどが、
同じ文化圏に属していることがわかります。
私は韓国の歴史ドラマや映画を観ていても、
日本人のルーツのことを考えております。
◎『尚衣院 -サンイウォン-』の評判
王妃が一人でただ歩くだけのシーンが
クライマックスシーンなのです。
たった4分ほどです。セリフもほとんどありません。
ここで感動してしまうのです。
こんな映画の作り方って、あり?
とビックリするはずです。
最近の日本映画は、たくさんのお金をかけて
ゴチャゴチャと小細工が多いのですが、
結局、駄作に終わってしまっております。
それと比較してみたら良いでしょう。
どうして、こんなに感動するのだろう?
他の人はどう思っているのだろう?
と気になり、ネットで調査してみました。
なんと、珍しいことにWikipediaがありません。
日本では2015年に映画公開されているのですが、
Wikipediaがないです。
ネット評判を見ると、非常に良い評価です。
アメリカのアジア映画祭(2015年)では、
観客賞というものを受賞しているそうです。
「2015/07/16 - 映画『尚衣院』は
招請された53編の上映作のうち、
観客の94%から評価されて観客賞に輝いた。」
と記されております。
中国でも話題になっていたようです。
◎ 映画『アマデウス』との比較
映画『アマデウス』を観たことがありますか?
1984年のアメリカ映画です。
アマデウスというのは、音楽家モーツアルトのことです。
彼は、天才的な才能の持ち主だったのですが・・・、
同じ時代で活躍したサリエリという大御所音楽家
からの圧力があって、
生存中には、良い評価を受けませんでした。
サリエリはモーツアルトの才能をよく見抜いていました。
だからこそ嫉妬心が芽生え、
モーツアルトが脚光を浴びるのを妨げようとしたのです。
サリエリだって、それなりの才能はありました。
が、モーツアルトのような天才ではなかったのです。
天才に対して激しい嫉妬心を抱き、潰そうとしたのです。
いや、潰したのです。
が、結局、歴史に名前が残ったのは、サリエリではなく、
アマデウス・モーツアルトだったのです。
ここで映画『アマデウス』を取り上げたのは、
韓国映画『尚衣院 -サンイウォン-』が、
映画『アマデウス』と似たような視点をもって
描かれているからです。
ネットの評判・批評を見ても、
アマデウスとサリエリのことに触れているものが
複数見つかりました。
朝鮮時代の天才デザイナーと伝統老舗長老との対立だ、と。
が、『アマデウス』のパクリ映画とは言えないと思います。
主人公の天才デザイナーの作った白い衣装は、
伝統老舗長老の作品だという結末になってしまい、
天才デザイナーの存在は消されてしまいました。
強い者が勝ち、そして歴史を書きかえたw。
しかし、それが人間の歴史の真理かもしれない。
◎『尚衣院 -サンイウォン-』は隠れた名作だ
『尚衣院 -サンイウォン-』には、
韓国の最高級の役者たちが出演しております。
王妃役を演じるパク・シネがとても美しい。
背景音楽も非常に良いです。
アメリカで公開されていないので、
アメリカアカデミー賞候補にはなっていないです。
どういうわけかカンヌやベルリンなどの
映画祭にも出品されませんでした。
基本的に韓国内だけの上映だったのです。
約1年後に日本でも公開されましたが、
さほど話題にならなかったようです。
でも、観た人の評判は一様に非常に良いのです。
こういう映画を”隠れた名作”というのではないでしょうか?
皆さんも、ぜひ観てみましょう。
この映画を観れば、他の朝鮮歴史ドラマを観る際に、
衣装のことについても関心が及び、
複合的な視点で考察できるようになるでしょう。