韓国ドラマ『新兵~僕は超(スーパー)VIP・ソルジャー~ (신병)』(2022年)

 このドラマ『新兵~僕は超(スーパー)VIP・

ソルジャー~ (신병)』は、

2011年当時の韓国軍兵士たちの生活ぶりが

よ~く描かれております。

それゆえ、立派な歴史資料であり、

現代という時代を扱った歴史ドラマと言えます。


1話あたり30~40分程度で全10話です。

サクッと観終えることができるのですが、

韓国の徴兵制度運用の実情が判り

とっても内容があります。


◎ 男だらけの兵舎での大部屋生活


兵舎には男兵の姿しか映っていないです。

韓国では男のみに徴兵義務が課されています。


兵士たちは6人ごとに班分けがなされています。

新兵(2等兵)は先輩兵(1等兵や上等兵)と

一緒の部屋に割り当てられ、

寝起きを共にしながら教育されております。

小奇麗な大部屋にベッドとロッカーとテレビ1台。

ベッドの周りにカーテン等の敷居はなく、

兵士にプライバシーはないです。


パソコンは設置されていないし、

固定電話や内線電話もない。

徴兵された下級兵士たちは、

個人所有のスマホやタブレット類を利用できず、

家族など外部との連絡はカード式公衆電話機を

利用しているようです。


映像なので匂いは伝わってきませんが、

たぶん臭いですよ(笑)w。


陸軍の場合には、除隊までの約1年半の期間、

この大部屋で生活することになります。


◎ 兵士たちの日常


兵士たちは、自分よりも先輩にあたる兵士と

廊下などで出くわしたときには、

「충성(忠誠・チュンソン)!」と言って

右手で敬礼をします。

自分よりも先輩の兵士から名前を呼ばれるたびに、

右手を挙げ名前と階級を言います。


兵士たちには、全体朝礼が屋外で実施されますが、

大雨などの天候悪化状況下では

朝礼が免除されるようです。その際、

兵舎内(大部屋内)にて、館内放送で朝礼を

受けれるため、兵士たちは

悪天候を願っているようです。


屋外での朝礼において、笑体操

(=朝の活力を養うために一定時間笑う)

が実施されている光景が映っていました。

日本のラジオ体操に似た普通の体操もしています。


兵士たちには、基本講習という「日課」の時間があり、

その授業(研修)を受けるのが普通の生活のようです。


運動場におけるマラソンの時間では、

軍歌『青い松』や『八道の男』を歌いながら

走っております。


韓国軍軍歌『青い松』


軍歌を覚えるのは兵士の義務のようで、

先輩兵士から大部屋の中で教わっております。


兵士たちは、基本的には、軍施設内で

基本講習を受けたり作業をしております。

大工や溶接、草刈り作業、建物のペンキ塗りや

排水路掘りや物干し台の補修など。


日曜日には、日課である基本講習や

軍施設内での作業などはお休みのようです。

が、個人行動は許されず、

グループにわかれて集団行動しております。

近くのプロテスタント系教会へ歩いていき、

ミサに参加しているシーンが映っていました。

韓国がキリスト教国であることを実感させられます。


別のグループは、「民間支援」という名目で

なにやらサボっておりました(笑)。

この「民間支援」っていうのは、

ボランティア活動のことでしょう。

いろんな形態のボランティア活動があるようです。


その他、軍施設内での趣味サークル活動

実施されているようです。大部屋の中で

酒を呑みながら室内ゲームをしているシーンが

映っておりました。


◎ 『韓国軍兵士の服務信条』と内務査閲


大部屋の中に館内放送が突然鳴り響き、

『韓国軍兵士の服務信条』を唱和するシーンが

ありました。

「我々の決意

民主主義を守護し統一に尽くす

実戦のごとき訓練で勝利する

法規を遵守し上官に服従する

名誉と信義を大切にし戦友と団結する」

という内容です。


兵士たちが生活している大部屋には、

頻繁に行政官と呼ばれる職種の上官が現れ、

「内務査閲」と呼ばれる所持品検査が

実施されております。

間食用のおやつやエロ雑誌なども

規制の対象のようです。

見つかると大部屋構成員全員の連帯責任w。

評価減点の対象となり、里帰り(帰省・帰宅)の

休暇をもらえなくなったり、場合によっては

一定期間「営倉」=独房へ入ることになり

怖れられております。


◎ 軍施設内での”いじめ”と「心の声箱」(마음 소리함)


新兵たちが入隊すると、まず最初に

”いじめの儀式”を受けます。

意味なく怒鳴られたり、蹴とばされたり

小突かれたりします。

後輩指導という名目の”いじめ”です。


新兵たちは、大部屋の中で、

先輩たちの入隊年月を覚えさせられております。

先輩や上官に服従する精神を

叩き込まれております。


新兵たちは、「チェソンハムニダ 죄송합니다

(申し訳ありません)」を連発しております。

「ミヤネヨ 미안해요」(ごめんなさい)

というカジュアルな言葉は使えません。


上等兵から受ける日々のいじめに堪えれなくなった

一等兵がキレてしまい、ナイフや銃(空砲)で

を使って反抗するシーンがありました。


除隊する前夜には皆から殴られる習慣があるようです。

毛布をかけられて、ボコボコにされますw。


”いじめ”を通報する措置として、

「心の声箱」(마음 소리함)が使われているようです。



しかし、密告したことがバレてしまうと

かえって酷い苛めを受けることになるw。

つまり、運用の難しい制度です。


◎ 除隊


徴兵期間は1年半(~2年弱)ほどであり、

その間に階級が2~3上がるようです。

兵士たちは皆、除隊する日のことを

指折り数えて待っているようです。


このドラマの中のシム・ジヌ兵長が

除隊する日に語った次の言葉は、

特に印象的です。

「適当にの言葉は絶対に信じず、

必死になって頑張れ、

必死に頑張れば、全部、自分に戻ってくる」


他方、意図的に除隊することを試みる兵士もいるようです。

トイレの中で自殺未遂事件を起こしたり、

いじめがあった旨を通報したりする方法を使ったり、

うつ病や病気を患ったように見せかけたりして、

軍上層部に除隊措置を取ることを仕向ける方法を

使っております。


◎ 日本のことを考える


私は、これまでの人生で2人の韓国人男と

出会いました。

一人は、徴兵期間中にPCと日本語を学び、

その後日本の有名大学の大学院へ進学し、

日本国から奨学金や住まいを提供されて

勉強していました。

奥さんにも同じ道を歩ませて2人で

リッチな学生生活をしておりました。

徴兵制度をうまく利用した例です。


もう一人の男は、徴兵期間中に

ヒドイ苛めを受けてうつ病になり除隊し、

二度と徴兵に取られないように

韓国から逃げてきた男です。

日本人女性と結婚し、二度と韓国へは

帰らないつもりのようでした。


徴兵制度には良い面と悪い面があるようです。

悪い面のほうが目立っているのですが、

良い面のほうを何らかの形で日本の政策として

取り入れることは可能かもしれないです。


たとえば任期限定の本人希望型非常勤自衛官の

採用です。憲法の規定に違反しないように、即ち

良心的兵役拒否の問題を回避できるように、

後方支援業務(物資運搬)や事務的業務

(システム業務・通訳翻訳業務)に就くコースを

設置する、というような具合にです。

厚労省がやっている職業訓練制度と似たような

経済効果を生むでしょうし、万一のときには

国防の役に立つでしょう。


◎ 付 : 続編=シリーズ第2作について


『新兵2』(2023年)も見てみましたが、

娯楽性が強い内容になっております。

ドラマ冒頭でも、「本ドラマは

フィクションであり・・・現在の軍生活とは

大きく異なりますこと注意」

という説明文が表示されております。


この第2作は、初作と同じ2011年頃

を時代背景にして作られております。

内容は、初作で取り上げられなかった細かい

点ですかね・・・。


気になった点は、登場人物たちの台詞の中に

「クンデノリ」(군대 놀이 軍隊ごっこ)

という単語が数回出てきたことです。


登場人物たちの口から出る言葉を通して、

原作者(脚本家)の意図や気持ちが

伝わってきます。つまり・・・

所詮、この徴兵生活というのは、

”軍隊ごっこ”の遊び(ゲーム)だろう・・・

ということです。

国のやっていることを冷静に見る姿勢や

反骨精神が感じられて良いです。


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