日本映画『二百三高地』(1980年)~ その3 日露戦争後の日本の歩み

 N・Sさん...


私のほうも、日本映画『二百三高地』を

先ほど観終わりました。しかし、

観終わったとは言え、終わりではないです。

映画を観た後には、その後ず~っと

事後鑑賞をしていくことになりますw。

映像やストーリーを思い出しながら、

その映画をひきずって生きていくことになります。

お互い大変ですねぇ~(笑)w。

私なんぞ、やたら沢山の映画を観ておりますから、

ひきずっているものが多くて、

すっごく重くって、大変なんですよww。


◎ 高等師範学校


さて、先般のメールでも書きましたが・・・、

今回の映画『二百三高地』の主人公・ヒロインが

当時の高等師範学校卒業者ではないか、

と私は推測しました。

この点、はっきりとは触れられていませんが、

たぶん、そうだと思います。

あのお茶の水のニコライ堂の近くには、

高等師範学校が二つあったんです。

後の筑波大学とお茶の水女子大学です。


ここで注意すべき点は、

高等師範学校に通っていた人たちの出身階級です。

貴族階級ではないのです。

また裕福な家庭でもないのです。

この点については、予め当時の学制のことを

知っておかないといけません。


貴族階級出身者たちは、たいていは

東京に家をもち、子弟を学習院へ通わせ、

学習院から東京帝大へ推薦入学させておりました。

そして、たとえば吉田茂のように官僚・政治家

となっていくのがエリートコースでした。


東京に別邸をもっていない地方貴族出身者

(たとえば太宰治とか)の子弟は、

地方の旧制中学旧制高校を経て、

帝大へ推薦入学しておりました。要するに、

今回の主人公たちのような小学校の先生というのは、

当時の日本社会ではエリート階級ではないのです。


高等師範学校は官立なので、授業料が無料でした。

全寮制なので、生活費もほとんどかからなかった。

学生時代には、兵役も免除されておりました。

貧乏な家庭の庶民階級出身者でも、

根気と努力さえすれば、

高等教育を受けれるという学制だったのです。

だから先のメールで、私は、彼らのことを

「庶民階級の代表だ」と書いたのです。


◎ 徴兵制(日本)と志願兵制(ロシア)


映画の中でも、庶民たちが徴兵されておりました。

あのときの日本は、国全体が貧しかったので、

総力をあげて戦っていたわけです。

この点、留意しておいてください。


これに対して、ロシア側は違っておりました。

当時のロシアは帝国であり、

王家・王族と貴族階級が治める国でした。

映画の中でも”騎士道”について触れられましたが、

戦争をしにいくのは貴族階級出身者たちの役割でした。


日本でもかつての江戸時代までは

戦うのは武士の役割だったでしょ?

それと似ております。しかし、

日本の場合には、帝国となった明治時代以降、

武器をとって闘うのは、

むしろ一般庶民の役割になったのですw。

一般庶民たちは天皇の家臣という扱いになり、

「臣民」と呼ばれました。


貴族階級のほうは、徴兵を免れる裏道が

事実上ありましたww。

庶民階級の人たちに大和魂という精神を植え込み、

お国=天皇のためだと言って戦わせていたのです。

名誉の戦死を遂げることが、

立派な生き方だと洗脳したのです。


このように、日本のほうは、庶民たちも含めて、

総力をあげてロシアと戦ったのですが、

これに対して、ロシアのほうは、

本当はまだまだ戦う余裕がありました。

だから、日本は実質的には負けたと言えるんです。


◎ 小村寿太郎


日本が勝った状態でロシアと和議を結べたのは、

交渉力に長けた外交官がいたためです。

が、日本の勝利はうわべだけのことだけであり、

本当には勝ったとは言えないです。

そのことに気が付いた国民は、

ロシアとの和議締結に成功した外交官=小村寿太郎

の家に押しかけて石を投げ込むなどして・・・、

大暴れしました(笑)w。


庶民たちは貧乏生活を強いられ、

生活が成り立たなくなり、一部の人たちは

ブラジルなどへ入植(移民)していきました。

日本人のブラジルへの集団移住は、

日露戦争終結後の1908年に始まります。

この点については、別のドラマや映画がありますので、

そのうち一緒に観てみましょう。


東北のほうでは天候不良による大飢饉が起こり、

東京の吉原(よしわら)への人身売買の話や、

間引き(まびき)された子供たちの幽霊話=

座敷童子(ざしきわらし)の話が出てくるのですよ。

知っていましたか?


そういう時代を背景として、『動乱』の時代、

つまり515事件226事件へと至っていくのです。

そして、軍部が力をつけたところで

太平洋戦争へと至るのです。


◎ 映画やドラマの”全体像”


これまでの映画やドラマの視聴を通して、

N・Sさんも、映画やドラマの”全体像”が

見えてきたのでは?

だいたいの名作映画や名作ドラマは、

過去の実話(史実)を題材としており、

映画群の中で目立つ”中核”を構成しています。

いわば大木(たいぼく)ですね。

そして、その大木には、枝や葉がついており、

根元には苔やシダみたいなものも付着してます。

それらが集まって森を構成しているんです。


たとえば、『ラストエンペラー』は大木であり、

それに付着する枝のように『李香蘭』があり、

根元には苔のような感じで『黒い太陽七三一』がある。


◎ 現代日本:非現実作品の乱発


最近の現代日本では、映像界が一丸となって

こうした木や森を共同で作る取り組みから外れて、

独自の発想でフィクション(妄想)を作り始めました。

それが漫画(コミック)を母体とするアニメ群です。

森の上に浮かぶ雲みたいなモノを作り始めたのです。

宙に浮いている話なんです(笑)w。

テレビドラマの多くも、そんな感じですw。

過去の歴史だけでなく現実からも離れた内容なのです。

全くの妄想なんです(笑)。


ドラマの多くを占有している恋愛ドラマだけでなく、

時代劇ドラマまで、妄想で作られました。

その代表作が『水戸黄門』であり、『遠山の金さん』、

『大岡越前』、『暴れん坊将軍』、『大奥』・・・

という具合に続きます。

『信長協奏曲』や『JIN』も妄想が激しい(笑)w。


日本の歴史を踏まえたドラマや映画というものも、

少しは作られ続けましたが、

面白味という点では問題をかかえており、

多くの日本人から敬遠されました。

たとえば、『NHK大河ドラマ』です。


低予算で高視聴率がとれるバラエティ番組や、

思想信条の点で無難な内容であるスポーツ番組など

のほうがスポンサーに気に入られ、

そういう放送時間が増えました。

ゲーム機やゲームを搭載できる携帯端末の普及により、

日本人は、非現実ゲームに夢中になりました。

こうして、日本人は、自分たちの歴史について、

記憶喪失になってしまいました(笑)w。


◎ 日本人の精神=大和魂の喪失


日本人の精神=魂というものも伝承されなくなりました。

だって、そういう精神は歴史を学ぶ過程で形成されるからです。

確かに、終戦までの日本人に宿っていたのは、

偏った大和魂でした。

大日本帝国にとって都合の良い具合に考案された

”臣民”らしい生き方でした。

忠孝を基本とした儒教(武士道)の精神に、

神道という宗教を付け足したものです。

天皇のために死ぬ、というのが大和魂とされました。

今回の映画の中に出てきた乃木希典とその妻も、

明治天皇崩御後に追死していますね・・・。

あれが、見本となるべき忠臣の理想像なのでした。


戦後日本を占領したマッカーサーは、

そういう大和魂を否定し、

日本人から忘却させようとしました。

私もそれは忘れ去って良いと思いますが、

かつての儒教の精神には”勤勉さ”というものも

含まれていました。「智」や「信」です。

その点も忘れてしまったので、

日本人は、不真面目になってしまいました(笑)。

アメリカから資本主義の論理を沢山吸収してしまい、

要領よく儲けることが良いこととされ、

地道にコツコツと努力することができなくなりましたw。


◎ 三島事件(1970年)


このことに危惧感を抱いた三島由紀夫が、

自衛隊市ヶ谷駐屯地で、公開自刃したのでした。

三島由紀夫の感性は鋭く、当たっていたと思いますよ。

当時の日本人の大部分には理解困難でしたが、

三島由紀夫は今日の日本(人)の姿を予想しておりました。

アメリカナイズされた現代日本国籍人からは、

かつての日本人の美徳であった精神は、

すっかり消えてしまっております。

三島由紀夫の予想した通りですよ。

現代日本国籍人の大多数が日本語を読めず、

書けないんです。

三島由紀夫の美しい日本語を読んだことがないし、

読めないんです。

日本語を話せない人もやたら多いのですw。

もはや日本人じゃないのですw。





N・Sさんは、日本の歴史を扱った映画やドラマを

たくさん観て、日本人が失ってしまったモノを

再発見してみてください。



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