BBC制作ドラマ『レ・ミゼラブル』Les Misérables(2018年)~ その5 現代日本は民主主義国?

 N・Sさん...


私のほうは、『レ・ミゼラブル』第7話を

観始めました。

パリで暴動が起こっています。

この暴動は「6月暴動」と呼ばれているもので、

本当に起こったことです。

1832年6月5日~6日のことです。


◇ 民衆の歌 Do You Hear the People Sing?


◎ コレラ大流行と凶作⇒物価上昇⇒6月暴動


このドラマの中では描かれていないのですが、

1832年春、パリではコレラが大流行しており、

沢山の人(1万8千人)が亡くなっております。

ついでに天候不順で凶作だったんですねぇ。

物価が上がり庶民たちの政治的不満は爆発寸前でした。


ルイ王朝を支えるペリエという首相と、

ナポレオンの部下だったラマルク将軍の二人が

コレラによって死亡しています。

ペリエ首相の葬儀は盛大だったのに対し、

ラマルク将軍の葬儀はそうじゃなかったのです。

それで、ドラマの第6話で描かれているように、

パリの市民たちがその市民葬儀を行うということで、

集まっていったんですねぇ・・・。

そして、今回の第7話で描かれている

パリの6月暴動へ発展していきました。


◎ 労働の中で生きるか、戦いの中で死ぬか


7分17秒のところに、

フランス語の文字が書かれた白布が見えます。

「戦いに命をささぐ」という字幕がついてますが、

かなりニュアンスが違いますねぇ~(笑)w。

軽薄な翻訳だと思いますよ。あの文字は、

Vivre en travaillant ou mourir en combattant 

って書いてあるのです。それは、

「労働の中で生きるか、戦いの中で死ぬか」

という意味です。

王政を支える奴隷として過酷な労働を

強いられて生きるか、それとも、

共和国を作って自由・平等な世の中を実現するか、

という意味のスローガンです。


政府軍は3万、民衆のほうは3千です。

圧倒的に政府軍のほうが力が多いですね。

結局翌日の夕方に暴動は鎮圧されてしまいました。

このとき、『レ・ミゼラブル』の原作者

ヴィクトル・ユーゴーは、パリにいたのです。

暴動を行っていたわけではないですが、

民衆蜂起を支持する考えの持ち主でした。

だから『レミゼラブル』のクライマックスシーン

として描いたのです。

事実を歴史として綴(つづ)ったのです。


◎ 韓国の光州事件


先般、韓国映画『広州5・18』を観たのですが、

あれは1980年の5月に広州市で起こった事件でした。

広州事件は、広州市の民衆集会を契機に、

軍事政権側が”見せしめ”として庶民を弾圧し、

そしてそれに抵抗するという形で

民衆蜂起がおこったというものでした。

パリの6月暴動も光州事件も、よく似ております。


◇ 화려한휴가 華麗的假期 May18


人類は、時と場所こそは違いますが、

何度も何度も同じことを繰り返しているのです。

N・Sさんは、貴重な歴史の一場面を

自分の目で見たことになります。


◎ 現代日本は民主主義国?


ここで、日本のことを考えないといけません。

日本では、かつて、民衆蜂起というものを

一度も経験したことがありません。

江戸末期から明治にかけての戊申戦争は、

徳川将軍による武家支配を継続するか、

あるいは天皇による王政を実施するかの対立です。

徳川幕府によって虐げられてきた下級士族たちが

中心となって、王政復古が行われたというのが実情です。

明治になって庶民の世の中が作られたわけではなく、

天皇を中心とした貴族政社会が実現されただけです。

明治期の日本は、国民主権の国ではなく、

天皇主権の国であり、貴族が世の中を支配する

帝政の国でした。そして、

徳川幕府のもとで下級士族であった人たちの

一部が貴族になり、その子孫が現代の日本でも

国会議員や大臣や総理大臣をやって

世の中を支配しております。

現代日本は、明治時代の枠組みを引きずっており、

本当は、民主主義国家ではないのです。


やはり働いている(労働)だけじゃ、

人間らしく生きれないですよね?

名作映画やドラマを観て、人間の歴史を知って

人間の意味を考えて、人間の生き方を考えて・・・、

人間らしく生きるのが良いと思います。



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