ダニエル・キイス著『アルジャーノンに花束を』~ ケネディ大統領のGo to the Moon !

 N・Sさん...


ダニエル・キイスによるSF小説

『アルジャーノンに花束を』(小尾芙佐訳)

を読み終わりました。

小さい字だし485頁もある長編小説なので、

読むのがちょっと大変でしたぁ(笑)w。

この本は、ピュアさんから勧められ、

そしてお借りしたものです。


この『アルジャーノンに花束を』は、

1959年に中編小説として発表され、

1960年にヒューゴー賞短編小説部門を受賞。

1966年に長編小説として改作されて発表され、

1967年にネビュラ賞を受賞しております。

これまでに、全世界で沢山の人が読んだし、

映画化、ドラマ化、演劇化されました。

今回、私が読んだのは長編小説のほうです。


私も、この『アルジャーノンに花束を』

を読み始める前に、この本を原作とした映画

『Charly』1968年(邦題『まごころを君に』

を観ました。主演したクリフ・ロバートソンは、

アカデミー主演男優賞を受賞しております。



485頁もある分厚い本を読み始める前に

映像を観ておくと理解が非常に早いですが、

この映画は原作本の内容の10分の1以下に

なってしまっておりますw。

あちこち重要な話が端折られているのですw。

映画を観た後には原作本を読んだほうが

絶対に良いです。

できれば、英語で読んだ方が良いらしいですww。


◎ あらすじ


この『アルジャーノンに花束を』は、

最初に書きましたようにSF小説です。

SFというのは、Science Fiction の略であり、

「空想科学小説」という意味です。つまり、

非現実のことをテーマとしております。

しかし・・・、

その空想(非現実)の中にも、

人間活動の真理や真実というものが

見え隠れする場合があります。

とくに多くの人が感銘を受けた作品には、

重要なことについて触れられている傾向があり、

バカにはできません。


どんな「あらすじ」かって?

主人公のチャーリーは、知的障害を持っている

32歳の男であり、家族から離れて、

パン工房で雑用をしながら一人で生活しているんです。

時々、大学の知的障害成人センターへ行って、

カウンセリングを受けていたんです。

その大学ではハツカネズミを使った動物実験

をやっており、脳を活性化させる手術法と

治療薬が完成したんです。

そのハツカネズミの名前が「アルジャーノン」です。

その手術法と薬の効果を確かめる実験台として、

チャーリーが抜擢されたんです。

手術前にはIQ68だったチャーリーが、

あっという間にIQ185の天才になったんですよ。

ところが、9か月経たないうちに、

アルジャーノンは死んでしまうし、

チャーリーも知的障害者に戻ってしまった

という悲しい物語なんです。


アリキタリの内容ですか(笑)?

うん・・・、そうかもしれない・・・。

私も日本の眉村卓とか筒井康隆が書いたSF小説を

高校生のときに沢山読んだのですが、

似たような話があったように記憶しております。


この原作本では、映画では触れられていない内容が

沢山書かれていること、先ほど述べた通りです。

とくにチャーリーの家族のことです。

チャーリーには優しいお父さんと、

ちょっと変なお母さん、そして欲張りな妹がいました。

その家族が知的障害のあるチャーリーに

どんなことをしたのかが回想という感じで

描かれております。

家族なのに、いや家族だからこそ

チャーリーに酷いことをしたんです。

チャーリーが友達だと思っていた職場(パン工房)の

同僚たちも、チャーリーに気付かれないように

けっこう悪いことをやっていました。

天才となったチャーリーは、そういう過去のいきさつを

思い出してしまうんですw。

怖いですねぇ~(笑)?

だから、天才となったチャーリーを疎ましく感じる

ようになってしまい、チャーリーを

パン工房から追い出してしまうww。


チャーリーは、頭が良くなれば、みんなが自分のことを

もっと好きになってくれると思っていたのに、

孤独になってしまったんです。


でも良いことも起こったんです。

32歳になって、突然、脳力が目覚めたチャーリーに

春が来たんですよ。彼女が出来たんです。

なんと・・・2人もですよ・・・。

この点、映画では殆ど描かれておりません。

原作本にはちょっとHなシーンも書かれております。

N・Sさんも興味があるでしょう(笑)?

ぜひ原作本を読んでみてくださいw。

以上が、この『アルジャーノンに花束を』の

大まかな概要です。


◎ 『Flowers for Algernon』の意味


『アルジャーノンに花束を』というタイトルの意味

については原作本最終頁(485頁)のチャーリーの

最後の『経過報告書』の末尾に書かれております。

「ついしん、どーかついでがあったら

うらにわのアルジャーノンのおはかに

花束をそなえてやてください」と。


些細なことですが・・・、

この原題の『Flowers for Algernon』

「花束を・・・」と訳すと

とっても豪勢に感じてしまうのです。むしろ、

a few flowers for Algernon

(2~3本の花をアルジャーノンへ)

という意味に近いと思います。もし

『a bouquet of flowers for Algernon』 

であれば、「花束」を意味するのですが、

そういう意味じゃないと思います。

ほんの数本で良いから花をそえてほしい。

自分(チャーリー)が死んだときにも、

数本で良いから花をそえてほしい。

いつまでも忘れないでいてほしい、

という意味だろうと思います。


◎ ダウン症


主人公のチャーリーが知的障害者であることは、

さきほど書きました。

原作本の中のチャーリーは自分のことを

「白痴」であると言っておりますが、

詳しい病名については書かれておりません。

が・・・、私の勘では、

たぶんダウン症だと思います。


ドストエフスキー原作の『白痴』では、

癲癇(てんかん)が原因となった後天性の脳障害

つまり生まれつきの障害者の話ではなかったですが、

今回のチャーリーは先天性の脳障害

つまり生まれつきのダウン症だと推測します。

小さい頃から障害があるようですし、

癲癇を起こしているシーンが見当たらなかったからです。


「白痴」という単語はかつては医療用語だった

のですが、現在では差別用語に当たるとされており

普通に使えませんがw、

「ダウン症」というのは現在でも医療用語です。


ダウン症は、細胞分裂時に21番目の染色体が

1本余計に多くなること(21トリソミー)に因り

発症する先天的な遺伝子疾患です。

約1000人に1人の割合で発生するそうです。

けっこう高い確率ですねぇw。


◎ 京都大学のアルジャーノン


2017年9月、京都大学の萩原正敏教授らの研究チームが、

ダウン症の知的能力障害の原因となるDYRK1A遺伝子の

過剰な働きを抑制し、神経細胞の増殖を正常化する化合物

「アルジャーノン」を発見したそうです。

妊娠中のマウスへの投与で脳構造の異常や学習能力が改善しました。

ダウン症iPS神経幹細胞の増殖を促進- 京都大学


これって・・・、

ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』や

映画やドラマ、演劇の影響を受けての

研究なのでしょうか?

人間への臨床試験はまだのようですが・・・、

ともかくダウン症治療の方向性が見えてきましたね?


N・Sさんは、このアルジャーノンという薬を

人間へ使っても良いと思いますか?

使うべきではないと思いますか?

今回のダニエル・キイスの作品の結末からすると、

やめておいたほうが良いと思いますか?


私は、やってみる価値があると思うんです。

可能性があるならば、チャレンジすべきだと思うんです。

危険な賭けかもしれないけど、

困難な道を選択すべきだと思うんです。


今回の『アルジャーノンに花束を』においても、

主人公のチャーリー本人が望んでいたことだし、

最後に元通りになってしまう前にも、

後悔をしていないばかりか、

やって良かったと考えています。

チャレンジして良かったと考えている。


ダウン症の人だけでなく、その家族や親類縁者たち

にとっても、この京大が開発した「アルジャーノン」

という薬には大いに期待しているはずです。

早く使えるようにしてほしい、

危険な実験であっても良いから

試してみたいと思っている人が沢山いるはず。

絶対の安全が確認されるまでは、

人間には絶対に使えないなんて言っていると、

間にあわないかもしれない・・・。


思うのですが・・・、いろいろな要件を充足する場合、

例えば本人および家族からの真摯な希望があって、

当該大学病院の倫理委員会の慎重な検討と合意、

国・自治体や特別委員会、あるいは地域医師会などの

許可・許諾などの要件を充たすような場合に、

新薬を実験投与できるような政策を作れないものか?

この点、国会のほうで議論して

早急に法律を作るべきです。

内閣のほうでも、政策を検討して作るべきです。

助成金や健康保険の適用についても検討すべきです。


◎ ケネディ大統領の Go to the Moon !


かつてアメリカ大統領のケネディは、

アポロ計画を打ち立てるにあたり、

有名な演説を行いました。

 Go to the Moon !と叫びました。

困難だからこそ、やる価値があるんだと言いました。


それと似ていると思うんですよ。

困難だからやめておくのではなくて、

困難だからこそやってみるべきだと考えるべきでは?

人類はそうやって進歩してきたんです。

失敗してもめげずに頑張ってきたからこそ、

今日の文明があるんです。

やってみる価値はあると思うんです・・・。

そう思いませんか?



We choose to go to the Moon. 

We choose to go to the Moon in this decade 

and do the other things, 

not because they are easy, 

but because they are hard...


◎ 三重大学医学部の最新研究


2025年2年19日、三重大学医学部の橋詰令太郎講師らの

研究グループが、ダウン症候群の人の細胞から

過剰な21番染色体を除去する画期的な手法を開発した、

との報道がありました。

三重大学の研究最前線

- ダウン症候群の人の細胞から過剰な21番染色体を除去


この報道を受け、

公益財団法人日本ダウン症協会から、

申し入れ書=抗議文が発せられております。

三重大学への申し入れ書


この問題は、難しいですねぇ?

しかし、難しい課題にチャレンジすべきだと思うんです。

どうすれば一番良いのか、

多くの人が話し合ってみるべきです。

国・自治体などは、まずその場を設定すべく、

公聴会を開くべきでしょう。




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