日本映画『浦島太郎の後裔』(1946年)~日本のジャーナリズムと民主主義

 N・Sさん...


私の風邪のほうは悪化傾向にありますが、

安静にしながら古い日本映画を観ておりますよ。


1946年公開の日本映画『浦島太郎の後裔』です。

1時間22分の白黒映画です。

画質や音質が悪いのですが、それがかえって

歴史の重々しさを感じさせます。

なにせ・・・、昭和21年公開映画ですよ。

終戦後まもない時期に作られた映画です。


背景で当時の日本の様子が映っております。

戦後すぐの東京の街が映っております。

その光景を見るだけでも価値がありますよ。




◎ 浦島太郎の後裔


浦島太郎の子孫が出てくるわけではないです。

ウラシマ(浦島五郎)という復員兵が登場します。

南方戦線に取り残されようやく日本に帰ってきた

という想定で、ラジオ局の取材を受けて

生放送で「ハーアーオー」と叫びます。

それが南方の猿たちの「悲しい」という意味の

言葉だと説明します。

ウラシマは「今の日本を見ると悲しいので、

ハーアーオーと叫ばざるを得ない」と語ります。


そのウラシマの声をラジオで聞いた婦人記者が

路上生活をしているウラシマを見つけ出し、

ウラシマをネタにして記事を書いていこう

という作戦を立てます。


婦人記者は、荒れ果てた東京の町を歩き回り、

上野公園で生活しているウラシマと

その元上官に会うことに成功。

「国会議事堂の上に登ってそこで叫ぶといい」

と提案します。


ウラシマと一緒に路上生活している男が発した

次の言葉が、この映画のテーマ(主題)だ

と思います。

「政治とは一体なんじゃ?

石ころをパンに変える力でもあるのかね?」


◎焼け野原の中の国会議事堂


焼け野原の中に、国会議事堂が映っています。

スゴイ映像ですよ。


今の国会議事堂とは違います。

立て直し前の昔の国会議事堂です。

あの国会議事堂は、何度か立て替えてますね?

私はかつて憲政記念館へ見学しに行きましたが、

国会議事堂の建て替えのことについて

展示物があったように記憶しております。


◎ ジャーナリズムとは何か?


ウラシマについての記事を書いた婦人記者と

新聞社の社長が会話しております。


(社長)

あの男には背後関係があるのかね?

(婦人記者)

黒幕は私です。

(社長)

君はあの男の愛人なのか?

(婦人記者)

いいえ・・・。

(社長)

君はなぜあの男を議事堂へ登らせたの?

(婦人記者)

私は新聞記者ですから・・・。

(社長)

えらい!!君にそれだけの才能があるとは

思わなかったよ。どうだね・・・、今後

あの男を十分に引き回せる自信があるかね?

(婦人記者)

あるつもりです・・・。


社長は、胸ポケットから財布を取り出し、

「これは特別賞与だ」と言って、

婦人記者へお金を渡します。


こういうことは・・・、

新聞はやってはいけないでしょ(笑)?

一種のヤラセですw。

でも、これが日本のマスコミですよ。

それを風刺して(皮肉って)いるのです。


◎  民主主義とは何か?


映画冒頭から「民主主義」という言葉が

セリフの中に登場してきております。


最近の日本映画は

内容の乏しい駄作が大部分を占めており

魅力を欠いてしまっているのですが、

戦後まもなくのドタバタの時期に

こんな内容のある映画が作られていたとは

実に驚きです。


マスコミが作り出したウラシマという英雄が

国会議員候補になります。

”美しい頭、中はからっぽ”な婦人記者と

”ハーアーオー”と叫ぶだけの国会議員候補。


これが日本の民主主義ですよ(笑)。

国会・行政・司法を牽制すべき第四権力である

マスコミが、政治と癒着しております。


◎ 美しい日本語


この映画はもちろん日本語音声ですが、

当時一般に使われていた標準日本語であり、

現代の日本語とは少し異なります。

この80年間で日本語は少し変化しているのです。

私は、当時の日本語のほうが

現代の日本語よりも上品で綺麗だと思います。


◎ さいごに・・・


頭がからっぽな婦人記者は、自分の間違いに

気が付きます。ウラシマのほうも、

自分の叫び声と髭がニセ民主主義政党に

利用されていることに気が付きます。そして

髭をそって竜宮城=ニセ民主主義政党から

去っていきます。


こんな内容のある日本映画って・・・、

初めて観ましたw。

ビックリしましたよ。

日本人にもこういう映画が作れたんだ・・・?

って感動しました。


この映画が作られた昭和20~21年の頃って、

国民とは何か?臣民と何処が違うのか?

民主主義とは何か?

ジャーナリズムとは何か?

ということを多くの日本人が真剣に考えていた

と想像します。

そういう時代背景だったからこそ、

こういう名作映画が生まれたんだと思います。


英語字幕が付いておりますので、

もしかしたら英語圏の外人たちは、

日本研究のために観ているんですねぇ。

ところが日本人のほうは、

そんな映画があったこと自体知らない。

日本の民主主義の出発点のことを

覚えていない。

その点、かなり問題がありますねぇ?

そう思いませんか?


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